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東京2020オリンピック・パラリンピックメダルケースデザイナー吉田真也さんへのインタビュー

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2021年8月4日 更新

吉田真也さん
 現在開催されている東京2020オリンピック・パラリンピック。

 今大会でメダリストたちが手にするメダルケースをデザインした市内在住のプロダクトデザイナー吉田真也さんにお話を伺いました。メダルケースは2018年に公募が行われた後、選考委員会において選定されています。

 吉田さんの子どもの頃やものづくりの道に進む過程、メダルケース制作の経緯などのお話を伺いました。

—子どもの頃、どんなお子さんでしたか。どのようなことに興味がありましたか。

 ものを作ることが好きで、いろんなものを作っていましたね。

 日用品や玩具の中に何が入っているのか気になって、全部ばらしてしまっていました(笑)妹の玩具をバラバラにして元に戻せなくなったこともありましたね。父が家電や機械などを自分で直すところを見ていたことと、家に工具があったので、ネジを見つけると分解していました。

 小中学校では図工や技術の教科は成績が良く、モチベーションも高かったですね。
 身体を動かすこともとても好きでした。父が川や海などのアウトドアが好きだったこともあり、その影響で外で遊ぶことがずっと好きでした。

—自動車整備士になった理由や経緯はどのようなものでしたか?

 小中高校とあまり勉強をしなかったと思います。あまり興味がわかなくて…。

 高校の時、周りの友達が進路を決めていく中、自分は決められずにいました。焦りましたね。でも手を動かす仕事ならやれると思っていて、身近なところで自動車の整備士を目指そうと思いました。
 高校卒業後、整備士の専門学校に入りました。ここで学んだことは馴染みが良く、成績が良かったです。高校までの勉強では、成績が伸びなかったんですけど…。

—ものづくりに興味を持った経緯はどのようなものでしたか?

 20歳から自動車整備士として働き始め、部品一つ一つに込められた究極の設計に日々感心していましたね。この構造賢いなぁとか。それで徐々に何かを生み出す設計者に憧れを抱くようになりました。一生かけて取り組みたい仕事になると感じました。


ーその後、整備士を辞めることになるんですね。

 若いうちしか挑戦できないと思ったのもあって、割と早めに決断して、23歳で会社を辞めることにしました。
先輩方からはだいぶ心配されましたけど(笑) 整備士の仕事が繁忙期を迎える時期を外して会社を辞めました。

—会社を辞めた後はどうしたんですか?

 時間をかけて自分と向き合い、ものづくりに関わるエンジニアや研究者、デザインなどについて調べましたね。デザインはどんな分野においてもその視点から提案ができるし、広がりがありそうだと思いました。その中でも、エンジニアや職人たちと、一緒にものを作り上げていくプロダクトデザイナーという仕事に就きたいと思って、仕事を辞めた翌年の4月、そのための専門学校に通い始めました。学校に通い始めて、数年後デザインの意味がわかってきました。
 
 デザインっていう言葉は、ファッションとか、絵を描くイメージが強くて、自分の人生には関係のない才能の世界だと思っていたんです。なので、自分が構造を理解したり、再構成したりすることが得意ではあったんですが、デザインとは無縁のことだと思っていました。でもそれもデザインというものの領域に含まれている部分であることがわかったんですよね。
 

ー会社のホームページにはスタイリッシュな家具や生活用品が掲載されていますね!

 家具がキャリアのスタートになっていますね。
 専門学校の卒業制作で木製ハンガーを制作したんですが、秋田木工という曲木の老舗メーカーがそのまま製品化してくれたのが、とても嬉しかったですね。このハンガーがグッドデザイン賞やドイツ主催の国際的にも権威の高いiFデザイン賞を受賞したんですが、なんの実績もなかった僕にとって自信やモチベーションに繋がりましたね。


  製品化された「Tree hanger」

—オリンピックのメダルケースデザインを応募するまではどのような経緯だったんでしょうか?

ケースの制作に向け共に戦った(株)山上木工山上裕一朗専務と
 2018年9月にメダルケースのデザインの公募が開始されたんですが、僕は知らなかったんです。そこに一緒に仕事をしていた北海道にある株式会社山上木工の山上裕一朗専務から、2週間後に公募の締切があるんだけど、木を使ったケースのデザインをなんとかお願いできないかと電話で打診があったんです。
 
 山上木工さんはミラノサローネなどの海外の展示会の試作を作ってくれていた会社で、専務の裕一朗さんは僕と年が近いんです。価値観が共有できるし、仲良くさせてもらっていたんです。SNSも使いこなして、打ち合わせもテレビ電話でやったりしてグッと距離感が近づきましたね。裕一朗さんとは、物理的な距離はものすごく遠いですが、精神的な距離は全く感じません。
 
 裕一朗さんからの話に、寝ないでもやります!と即答しました。いきなりの締切2週間だったので最悪できなかったらごめんなさいと伝えました(笑)
 

ー2週間ですか!!時間がとても短かったんですね💦

 そうですね、2週間て本当にあっという間なんですよね。。
 すぐに過去のメダルケースのリサーチ、日本の文化をどのように表現するか、IOC(国際オリンピック委員会)にどういう提案ならできるか、日本の木の文化を象徴できる最高のメダルケースを!ということで始まりました。
 普段の仕事をしながら、夜の空いた時間に考えるのが本当にハードでしたね(笑)仕事が終わってから専務と夜間にテレビ電話で何回も打ち合わせを重ねました。
 
 日本には古くから木造建築や木製品の歴史があり、生活に根付いていますよね。木のお茶碗とか熱がダイレクトに来ないし、なんとも優しい柔らかさがある。この良さは込めたかったんですよね。日本らしいデザインということで、決して派手ではなく質実なデザインが良いなと思っていました。メダルと同じ円形が一番美しくて、最小限のサイズで実現できないかと、考え続ける中、円筒の側面をカットすればケース自体をそのままディスプレイできると考えが纏まりました。。それがちょうど期限の2日前でした(笑)
 
 締切日は徹夜でした。締切日当日の朝、都内の郵便局までそのまま車で駆け込んで、期限になんとか間に合わせることができました。
 

ー本当にギリギリセーフですね!2週間という超短期間にそんなドラマがあったんですね!

 たった2週間での提案ではあったんですが、自分のものづくりの経験全てを集約したのがこのメダルケースなんですよね。なので2週間で出来たデザインではなく35年と2週間だと思っています。そして非常に高度な設計が実現したのも裕一朗さんを初めとする全ての職人さん方との出会いのおかげだと思っています。

—メダルケースの条件はどのようなものでしたか。

 直径85mm、質量500g以上のメダルを収納できて、ディスプレイもできるケースというものでした。

 選手たちはメダルをディスプレイする専用ケースを特注していたということもあり、ケースだけでディスプレイもできることが条件の一つになっていました。

 あと、メダルのリボンがしわにならずに収納できて、メダルとともに選手に贈られるピンバッジも入るデザインになってます。予算の提示もありました。

 他にも、環境負荷が低く、永きに渡って同じ品質を保てる材質を使用するという条件がありました。いろいろな国に持って帰って頂くので、温度や湿度が変わってメダルが入らないとか壊れたということにならないようにしないといけないんです。

 

ーメダルケースは直径12cmと非常にコンパクトですね。

 リオオリンピックや平昌オリンピックのメダルケースと比較してもかなり小さいサイズになっています。サイズ感にはこだわりましたね。結果的に直径12cmでとても日本らしいさりげないサイズになりましたが、これは、日本人に馴染みのあるお茶碗のサイズ感です。

—藍色にした理由は?

 今大会のエンブレムに藍色が使用されていること、植物から生まれる色であり、日用品から戦国武将の甲冑まで使用されていた縁起のいい色でもあります。それに、地球上の大部分を占める空や海の色と同系色で、人類にとって馴染みのある心地よい色なのではないかと思っています。

ーとても深い落ち着いた色合いで、木目が美しく見えますね。

 木の種類は最高級のバットなどにも使用されるタモという樹種を使用しています。とても強靭な性質で加工性もよく、木目の美しい木なんです。タモが持つ強さと美しさをアスリートの姿と重ねています。

 そして木の質感をできるだけ残しつつ、しっかりと着色するコントロールがとても難しかったですね。色が入らずに白けてしまう部位があったり、品質としても安定した美しい色を追求しました。


 ケースに込めた熱意を語る吉田さん

—決定までの道のりは?

 締切日の後、二次審査を経て2カ月ほどで採用が決定したんですが、試作品の提出が迫っていたので、提出後すぐに試作に取り掛かりました。

 航空宅配便を使って、山上木工さんと試作品の確認をしました。2週間くらいで十数便もやり取りをしたんじゃないですかね。僕のコンマ何mmをこうしてほしいっていうこだわりや感性を信じてくださり、24時間対応で作ってくれました。

—決定を知った時の感想は?

 35年と2週間が詰まっていたのでやったーというよりは、落ち着いた感覚で、よし!という感じでした。
 プレッシャーも感じつつ、最高のものを作りたい、何が何でもやり遂げるぞという喜びを噛みしめるような感じでした。

—決定してからはどのようなことをしていったのですか?

 当初制作した試作品を1年以上かけて改良していきました。
 ケースと蓋には磁石が入っていてメダルの収納時にはぴったりと固定され、ディスプレイ時には蓋が繋がったまま保持できるようになっています。

 デザインした当初はメダルのデザインを知らないので、ディスプレイした時にメダル上部の文字が隠れてしまう部分があったんですが、文字が全て見えるようにし、かつ文字と固定された蓋の間に余白を持たせるように改良していきました。

 また、ケースや蓋にどこから磁石を入れたかわからないようにするために、裕一朗さんが大変な苦労をしながら頑張ってくれました。日本らしいさり気ない美学を貫くため、表面から見えず、完璧に蓋を固定できる強力な磁石の埋め込みを実現しました。

 他にも、収納したメダルの縁の造形をしっかりと見せられるようケースのメダル周りをすり鉢状にしたり、傷がつきにくく美しい質感になるように、ツヤ感も調整を繰り返しました。
 
 今大会のエンブレムもレーザーで彫刻するか、立体の印刷にするか検討しましたが、パラリンピアンの中には、目の見えない方もいるので、手で触れてわかりやすい立体の印刷にしました。
 
 結果的にものすごくシンプルなデザインになっていますが、莫大な検証をして一切の無駄を削ぎ落として行きついた結果がこのデザインなんです。
 

ー吉田さんのデザイナーとしてのこだわりや職人の方々の地道な調整によって、様々な点における「最高」が詰め込まれているんですね!

—メダルケースの製作場所は?

 山上木工さんで一つひとつ職人さんの手仕上げで5,000個強が作られました。
 

ーすごいですね!それだけの数を一つひとつ職人さんが作っていらっしゃったんですね。

 熟練の職人さん達の、高度な技術で丁寧に仕上げてくれています。
 

ーデザインの使用許可の都合で、メダルケースの画像をお見せできないのが残念です。

—この仕事のやりがい等を教えてください。

事務所工作室
 ものづくりを通して、共感したり、ぶつかりながらも切磋琢磨したり、最終的に誰かが幸せになることにやりがいを感じています。そしてこれまでの仕事での多くの方々との繋がりに加え、今回のプロジェクトをきっかけに新たな出会いを頂いていることに感謝しています。

ーこれから挑戦したいことや、夢は?

 僕が車の部品を通して感じたような感動を子どもたちにも体験してもらい、ものづくりの凄さや楽しさを知ってもらう機会を作りたいと思っています。
 人生において自分自身の特性を伸ばすことがとても大事なことであると感じています。子どもたちにも何かしらのきっかけになるような機会を作るのが自分の役目だと思っています。

 あと、市内の企業さんとコラボして、将来的に八千代発、千葉発で世界に発信できる製品ができたら嬉しいなと思っています。そのためにも、市内のものづくりに関係する人たちのネットワークを強化したり、ものづくりの拠点なんかも将来的には持てればと思っています。

ー八千代市に対する印象は?八千代市の好きなところがあれば教えてください。

 僕は、小学校3年生以来、ずっと八千代市に住み続けていて、一回も出たことが無いんですよ。
 八千代って、ものづくりするのに最適な環境なんですよ。車で30分圏内に超大型のホームセンターがめちゃくちゃいっぱいあるんですよね(笑)工具から素材、資材がすぐに手に入って、東京へのアクセスも悪くないですし。
 
 自然も多く、海も山もすぐに行ける距離にあるし言うこと無いんです。家から割とすぐのところにも牛舎とかがあったりしますし、都内にも近くて田舎の風景も残っている場所としては八千代市は結構上位じゃないでしょうか。

 子どもの頃から八千代が好きすぎて特に出る必要がないです(笑)

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